ヘビ革の種類と特徴

ヘビ革には多くの種類がありそれぞれ個性ある革素材ですが、現在では大きなサイズや柄模様の美しさからダイヤモンドパイソンが流通の主流となっています。

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●ダイヤモンドパイソン

和名:アミメニシキヘビ、学術名:Python reticulatus です。東南アジアに、生息する世界最大級の大蛇です。皮/革としては世界中で最も商業取引されていて、その特徴的なアミメ模様が様々なファッションアイテムに使われています。

 [コラム]ダイヤモンドパイソンの生息地

 [コラム]ダイヤモンドパイソンの商業取引

 

●モラレスパイソン

和名:ビルマニシキヘビ、学術名:Python molurus です。インド、ミャンマーを含む東南アジアに、生息する世界最大級の大蛇です。皮/革としては世界中で広く商業取引されていて、様々なファッションアイテムに使われ、沖縄の三線(蛇皮線)にはこの革が使われています。

 

●ヒイロニシキヘビ

学術名 Python curtus

尾が短く胴が太い体型のためショートテールパイソン、または全身が赤味を帯びているのでレッドパイソンとも呼ばれています

他のニシキヘビより水辺を好むので、蛇腹部分が発達せず、中央の大きなウロコが小ぶりなのが特徴です

マレーシアやインドネシアの原産で、背割りでヘビ革の柄模様をブリーチ(革の加工工程で柄模様を消すこと)する加工がほとんどです

 

●ラッセルバイパー

和名:ラッセルクサリヘビ

学術名: Vipera russellii

インド亜大陸、東南アジアに生息し、マムシやハブと同じクサリヘビ科の猛毒ヘビです。

カーペットバイパー、インドコブラ、アマガサヘビと共にインドでは四大毒蛇として恐れられています。

草むらや農地などの比較的湿気の無い場所を好む陸生のヘビの為、蛇腹が大きいのが特徴です。

流通は少なく希少な革です。

 

●ミズヘビ

学術名: Homalopsis buccata

・ミズヘビ亜科としてはかなり大型な部類に入ります
・川や池などが主な生息地で、日中は水場付近の倒木や岩の下などにいることが多く、完全な水中生活者というわけではありません。

 

●コブラ

学術名: Ophiophagus hannah

カンボジア、タイやネパールなどのインド亜大陸やインドシナ半島などの森林に生息する猛毒の陸ヘビ。

活発に陸上を移動する為、蛇腹部分が大きく発達しているのが特徴です。

 

●カロング(ヤスリミズヘビ)

学術名: Acrochordus javanicus

インドネシアに生息するヘビ。

主に水中で生活しているので、陸を這う時に必要な蛇腹が退化してほとんど見当たりません。

ザラザラしたウロコを持つことからヤスリヘビとも呼ばれています。皮革に使う時はザラザラを取り除いて風合い良く仕上げます。

 

●エラブウミヘビ

学術名: Laticauda semifasciata

・革としての新規入荷が少ない種です
・東南アジア海域に生息する猛毒のヘビです 
・主にサンゴ礁のある海域に生息しますが陸上に上がることもあり、ウミヘビとしては珍しく小さめの蛇腹が存在します。体の大きさに対してウロコが大きめなのが特徴です


●ドホール

学術名:Lapemis hardwickii

東南アジア、特にマレーシア、インドネシアが原産でワシントン条約のリストに載っていません。

革の特徴は、パイソンやコブラ革の様にウロコはめくれず、美しい四角模様が特徴です。

水中での生活が長いことから、地面を這う為に必要な蛇腹が無いのが特徴です。

 

・ヘビ革の「腹割り」「背割り」について

■腹割り

ヘビ革の割り方で、頭部から尾にかけて腹の部分をカットしたもの。フロントカットとも言いいます。
背中部分がメインのカット方法ですので、パイソンの網目模様が中央に配置され美しく表現できます。
ヘビ革の網目柄模様をブリーチ(革の加工工程で柄模様を消すこと)せず、しっかりオンリーワンの自然のままの柄模様を表現したい作品に適したカット方法です。


 ■背割り

ヘビ革の割り方で、頭部から尾にかけて背中の部分をカットしたもの。バックカットとも言いいます。
腹の部分がメインのカット方法ですので、ヘビ革の「ハシゴのような蛇腹部分」が革の中央に配置されます。
蛇腹部分をより強調することができるカット方法なので、ヘビ革の網目柄模様をブリーチ(革の加工工程で柄模様を消すこと)するケースが比較的多用されています。

 

・ヘビ革のラッセル加工

ラッセル仕上げとは、ウロコの下を黒くした仕上げで、ウロコがより引き立って見え、パイソンの存在感をより一層引き出す仕上げです。

以下、ラッセル仕上げの製造工程です。

①パイソン皮にこの皮独特のアミメ模様を残し、しなやかさを出す為にクローム鞣しを施した革に、色落ちしない様に特殊なノリを混ぜた黒の顔料を全体に塗布します。

②この頑強に塗布された顔料を、職人が一枚一枚拭き取っていきます。顔料が頑強に固着されているので拭き取るのに大変な労力と時間を費やします。

③拭き取られた革にラッカー系の塗料を塗布し、再度色落ち防止を施します。ラッカー系塗料は塗布すると革が硬くなってしまうので、4~5時間ドラムに入れて柔らかくします。仕上がった革にツヤ感があるのは、ラッカー系の光沢です。

④最後にプレスして、ウロコを整えます。

 錦蛇 谷黒仕上げ

 

・ヘビ革のウロコ止め加工

ウロコ止め加工とは、特殊な液体を塗布してヘビ革のウロコがそり返らないようにする加工です。

パイソンやその他のヘビ革をグレージングツヤ仕上げをした場合、ウロコの剣先がどうしても硬くなり、ハンドバッグ等の製品になった時にウロコが衣服等に引っ掛かる問題を避ける為、ウロコ止め加工を施します。

タンパク質を主原料とする糊の様な液体で、自然の風合いを残しながらウロコを止めます。しかし永久的に止めるものではありません。特に背割りは蛇腹のウロコが大きく、めくれ安い為、ウロコ止め加工は背割りには施さず、ほとんど腹割りに施されます。

エナメル加工等でウロコをコーティングすることで、ウロコを完全に止める方法がありますが、自然な風合いが損なわれ、プラスチック加工品の様な革になってしまいます。

小ぶりのパイソンやヘビはグレージングツヤ仕上げをしても、ウロコの剣先が柔らかいことから、ウロコ止め加工を施さない場合があります。

また、ソフトマット仕上げは、ウロコの剣先も柔らかいので、ウロコめ止加工をする必要がありません。むしろ型押しではない、本物のヘビ革ならではの立体感を堪能することができます。